ものづくり

子ども時代こそモノづくり経験すべきと思う5つの理由

kimidori

例えば、旅先での陶芸体験は、
時が過ぎるのを忘れて没頭するモノづくりの1つです。
子どもの頃の砂遊びを思い出しながら、
ただの土が意味のあるものに生まれ変わる過程を楽しみます。
体験後は、焼かれた完成品が自宅に送られてくる手軽さですが、
この陶芸を本気でやろうとすると、
土を練り上げたり、
道具を用意したり、
窯を的確な温度にして焼いたりと、
当然ながら多くの手間と時間がかかります。

日常生活に必要なものは、
100均とかスーパーに行けば大概は売っているし、
ネット上で探せば、珍しい道具や材料が何でも手に入る時代。
物だけでなく、
私たちのスマホの中には次々と新しく刺激的な情報が提示され、
webニュースを読み歩くだけであっという間に時間が過ぎてしまう。
ゲームもやりたい、
ドラマや映画は2倍速で観ないと見きれない。
起きている間は隙間なく忙しい・・・

今はまだ小さな子ども達も、
いずれスマホを持ち、
こんな具合に時間やお金を消費する生活に入っていきます。
親世代の私たちが生まれ育った頃とは異なり、
暇をつぶす手段が目の前に溢れているわけです。

そんな中、
土から器を作るという行為はなんとも古風で、
優雅で贅沢な行いに思えます。
コスパもタイパも悪いかもしれない。

しかしあえて、

無限の消費ループに入るその前に、モノづくりの経験をしておいた方がイイ

と考えています。
様々なジャンルのモノづくり経験が、
人生を切り開く基礎・土台の力に繋がると思うのです。

その理由を5つに整理してみました。

1.モノづくりには達成感がある

1本の長い糸、
数枚の紙切れ、
そこにある丸太など、
材料を意味のある何かにしていくためには、
細かな仕事を1つ1つ積み重ねていくしかありません。

根気のいる作業を、
途中で投げ出したくなるところをグッとこらえ、
集中を重ねて最後までやり切れることができれば、
登山で山頂に着いたときのような達成感で満たされます。

やり切れた経験は、
次のやってみよう!につながり、
前よりも少しステップアップしたくなるものです。

大きくなって、
何か気の遠くなるゴール設定を目の前にしたとき、
それにトライしようと思うか?諦めるのか?は、
こういう小さな”やり抜いた経験”の積み重ねで決まるのではないか、
と思うのです。
モノづくりの達成感は、
根気強さを鍛え、
自信につながり、
その後の背中を押してくれる
存在になってくれるはずです。

2.モノづくりは思うようにいかない

ふと思い立って絵筆を手に取り、
真っ白な画用紙に向かうことがあります。
しかし、
思い通りに描き終えることはほぼありません。
途中でただ1度、
集中力が欠けた筆の動きをしただけで、
選択した色がちょっと違っていただけで、
あぁダメだ、と心が折れてしまう私です。

ここまでイイ感じに進んでいたのに・・・というのは、
モノづくりではよくあることです。
手が途中で止まったとき、
ちょっと妥協してみたり、
正攻法では無い手段を取ってみたり、
ほんとはイヤだけど少しだけ巻き戻してみたり、
試行錯誤しながら前に進むことで完成に至ります。

モノづくりでなくとも、
人生には日々、思うようにいかないことがあります。
でも諦めずにあれやこれや考えていたら、
正しくないやり方で道が開けることだってある。
そんなズル賢さを含めた思考の柔軟さや粘り強さが、
モノづくり経験を通して会得できる
と考えています。

ちなみに私の苦手な絵画は、
筆をペンに替えたり、
画用紙をキャンバスに変えてみたりしながら、
最後までやり切れる手段を模索中です。
さぁいつか道が開ける日が来るでしょうか。

3.モノづくりは段取りがある

布と布とをミシンで縫い合わせる、という動作が
洋裁においてのハイライト、
最も「やった感」のある楽しい場面です。

そこに至るまでには、
正確な布の採寸と裁断、
縫代や縫い合わせ印を丁寧にとって、
要所はしつけ糸で仮止めしながら、などの的確な段取りが欠かせません。
おそろかにすると少しずつズレが生じ、
やっと完成のタイミングで
アレレ袖に腕が通らないよー!みたいなことになっちゃうからです。

どんなモノづくりにも段取りがある。
その1つずつの意味・意図を理解することで、
それを再構築する能力も自然と身についてきます。

頭の中に設計図を描き、
自分でアレンジした順序でモノ作りできるようになるし、
いくつかの作品を同時進行で作ることもできるし、
ちょっとしたミスが起こった時の解決方法も
複数思い浮かぶようになるでしょう。

2020年度から、小学校でのプログラミング学習が始まりました。
プログラミングもモノづくりの1つです。
文科省に掲載されていた有識者会議の議論まとめを読むと、
プログラミング学習での育成が期待されているのは
「論理的・想像的思考力、問題解決能力」などとあります。

日常生活に不可欠なスマホやPCのトラブル時も、
それらが正常に動く仕組みがわかっていれば、
ハードの問題、ソフトの問題、通信の問題、、、
などと自分で想定し、最短で解決できます。

何事においても
「これはどうやって作られているんだろう?」と興味をもち、
成り立ちや段取りを想像したり理解しようとすることが、
予測困難な時代を生きていく上で必要な力の1つだと考えます。

4.モノづくりは自分と向き合い、個性が出る

完成した作品にも個性は現れますが、
その過程でも個性が出ます。
とにかく折り目正しく進めないと気が済まない!とか、
早くゴールしたくて1つずつが雑になる!とか。

私の場合は、
手を動かしていることへの喜びに放心しがちで、
大事な段取りをすっ飛ばす失敗をよくします。
でも後戻りをすることが何よりもイヤ!
絶対失敗したくない「ここぞ」というタイミングでは
「集中力が切れたら手を止めて休憩する」
という自分の取説を持っています。 

モノづくりは自分とじっくり向き合う時間でもあります。
得意・不得意、
好き・嫌いがわかれば、
自分の活かし方がわかってくるのではないでしょうか。

5.モノづくりは材料や道具から多くを学べる

この紙はザラザラしているから糊(のり)付けしづらい、
あの木は濡れるとちょっと膨らむ、など、
加工してみて初めて気づく材料の特徴があります。

道具の世界は先人の知恵の結晶で、
羊毛から糸を紡ぐためのスピンドル、
筆でまっすぐに線を引くために使う溝引き定規など、
シンプルながらも的を得るその奥深さに ほほぅ! と感銘を受け、
素直に学びを得られます。

材料や道具の特徴を理解し、
それを完成に向けてどう活かしていくか?
自分の能力との三位一体で
小さな課題を都度 解決して完成させるのがモノづくりです。

子どもだからこそ経験しておきたい「モノづくり」

0(ゼロ)から1を生み出すためには、
まず0.1とか0.01を発想するところから始まります。
でもその0.01すら「自分でやってみよう」と思えなければ
そこで終わりです。

ゴールまでの気の遠くなる道のりを前にして、
最初の0.01がとても低いハードルに感じる”自分”を作ってくれるのが、
モノづくり経験
だと思うのです。

クリエイターだけではありません。
ビジネスだって、子育てだって、受験や資格の勉強だって、
何か大きな課題を目の前にしたとき、
それを避けて通ろうとするのか、
解決しようとするのか。
困難かもしれないけど、一つずつ状況を整理して把握し、
柔軟な発想でとりあえず1歩踏み出してみる。
モノづくり経験で小さな課題を解決してきた積み重ねが、
「できるかもしれない。やってみよう。」と
自分の背中を押してくれます。

何かを創作することは決して難解なことではなく、
意欲があれば誰でもできることなんだ、
と子どものうちに知っておいて欲しい。

そう、自分専用スマホを所持しての無限の消費ループに入る前に!です。

彼らは生まれた時からスマホのある世界にいます。
いま大人が夢中になっているスマホと、それを取り巻く社会の仕組みも、
ぜーんぶ人間が一つずつ作り上げたもの。
だからやろうと思えば自分にだってできるんだ、
と思えるようになって欲しいのです。

何の責任も背負わず、
のびのびと生きられる子ども時代に
さまざまなモノづくり経験ができる。
そんな場所を私は作りたいです。

ABOUT ME
子と親の100年研究所
子と親の100年研究所
代表
子どもと親を取り巻くさまざまな課題について、自分なりの答えをまとめています。
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