ジョブズは幼少期にモノづくりをしていた
2021年のベストセラー「スマホ脳」(アンデシュ・ハンセン著)には、
人間の脳がスマホにコントロールされてしまう仕組みががわかりやすく、
そして辛辣に書かれていました。
SNSの新着通知が来ればすぐに見たくなるし、
通知オフにしたらしたで、新しい動きが無いか?と
アプリ間を行き来する衝動を抑えられない。
これは、永らく狩猟生活をしてきた 人間 という生き物の本能だと。
日に何十回とスマホに触れ、その度に思考が中断され、
今まで何してたっけ?となること、ありません?
私、めちゃくちゃ身に覚えがあります。
ところでこの本の帯には
「スティーブ・ジョブズはわが子になぜiPadを触らせなかったのか?」
とありました。
中を読み、
スマホは中毒性がありすぎて子どもには危険だ、と
痛いほどに理解できました。
ジョブズはその中毒性に気づいていたからこそ、
スマホでアプリを動かすという仕組みを作ったのかな、
ならば愛する我が子に与えないのは当然か。
・・・と思う一方で、
命を削りながら産み出したiPhone&iPadという自身の傑作を、
我が子にも触らせたいと思う気持ちは無かったんだろうか?
子どもがこれに触れてどう育っていくか?興味はなかったんだろうか?と、
モヤモヤが残りました。
そこで手に取った中学生向けのジョブズの伝記。
ジョブズは幼少期に「モノづくり」を経験していた
生まれてまもないスティーブ・ジョブズを引き取り育てた養父は職人で、
5歳のジョブズに作業場を与え、
道具の使い方、モノの作り方、
分解して組み立てなおす方法を教えました。
職人としての仕事ぶりにこだわり、どんなに細かなところもおそろかにしない父の姿に、スティーブは感銘を受けた。
父の「手先の器用さときたら神業だった。なんでも直して動くようにするし、どんな機械でもバラして、また元に戻せるんだ」
(中略)
父はまた、物事を正しくやることの大切さも教えた。
「おまえが大工で美しいチェストを作るなら、後ろ側は壁に押しつけて見えなくなるからといって、安っぽいベニヤ板などを使っちゃいけない。そこに背面がある以上、やはり美しい板を使うのが仕事ってものだ」
これはジョブズの心に教訓として刻み込まれ、アップルが出す新製品でも繰り返し守られることになった。
「美意識が許さないというか、品質をとことん突きつめないことには、夜もおちおち眠れないんだ」
「スティーブ・ジョブズの生き方」BlumenthalKaren
職人としての仕事へのこだわり、
品質に妥協しない姿勢、
父の美意識にジョブズは感銘を受けたと振り返っています。
小学生になると、
近所のエンジニアからラジオや電子装置を組み立てることを教えてもらい、
自らの手でも作り始めたジョブズ。
「どれも魔法の箱なんかじゃなくなった。たとえば、テレビをみると思うんだ、『やったことはないけど、自分にはきっと作れるはずだ』と。これはものすごい自信になった。探求し学んでいけば、最初はどれほど複雑に見えることも理解できるようになるってね」
「スティーブ・ジョブズの生き方」BlumenthalKaren
何でも自分で作れる、と自信を持っていたことを振り返っています。
その後、
この世の中にまだ存在しない「自分の欲しいもの」を純粋に思い浮かべ、
それに必要な機能、大きさ、形状、材質、色彩、そして広告と、
妥協を許さず創作し続ける人生を歩んだわけですが、
幼少期に間近で見たモノづくりと美意識が人生の柱となり、
自分の手で作り上げた経験が次に挑む自分の背中を押してくれていた、
のではないかと想像しました。
我が子にタブレット使用を制限した話は出てこなかったものの、
答えは見つけることができたような気がします。
子どもの脳にとってより強い中毒性のあるスマホ、
それに依存する生活になってしまう前に、
何でも自分の手で作り上げられるという自信をつけて欲しかったのでは、
ジョブズ自身がそうして育ってきたように。
そして2ヶ月前に私が書いた記事、
子ども時代こそモノづくり経験すべきと思う5つの理由では、
私自身の経験から、同じような結論に至っています。
大学生のころ、初めてMacintosh Performa 5410を買って以来、
その洗練された世界観にハマり、
macの中での作品作りに夢中になっていった私。
そんな人生の偉大な師でもあるジョブズの思想と交差する部分が見つかり、
背中を押されたような気持ちです。
子どもの頃こそモノづくり経験をすべし。
より強くそう思ったのでした。