ダイバーシティ

「女だから」「男だから」で役割を決めない

kimidori

「女の子だもの、好きなことが見つかって楽しく生きられればいいよね。」

とある年配の女性との会話で出たものです。
「女は結婚したら仕事を辞めて専業主婦になるから
学歴とか就職とか頑張らなくてもいい」
という意味で昔よく耳にした気がします。
もうとっくの昔に無くなった考え方だと思っていたら、
いやいや、まだこんな近くにあった。

「男の子は家族を養って行かなくちゃいけないからそうはいかない。
好きなことやってもいいけど、稼げないんじゃ家族も持てない。」

男は外で働いて一家の大黒柱に、が昭和のスタンダードでした。
結婚するには収入がいくら必要だとか、
若年層の収入が下がって婚期が遅れているとか、
男性のハードルを上げるこちらの言葉は、
今でもわりと耳にする気がします。

25年前、就活するにあたり、
私には「家族を一生養えるような」なんて発想もなく、
自分のやりたいことを突き詰めました。
「女性だからそれでいい」
・・・実はそんな意識があったのかもしれません。

思い起こすと周囲の男性は、
公務員試験を受けて地元に戻ること一択だったり、
職種を問わず大企業の推薦枠を最優先に考えていたりと、
見えない重荷を背負っていたようにも感じます。

「女だから」「男だから」

無意識に持たされてしまった息苦しい言葉。
現代の様々な課題の根本にはコレが関わっている気がしてきました。

そんなことを考えていたら、
興味深い研究記事に遭遇しました。
兄弟姉妹の組み合わせが、将来の収入にも影響するというのです。

「長女・弟」の場合では、伝統的な性別役割分業意識を持ちやすく、その考えに沿った学業・職業選択・家族形成を行いやすいと言えるでしょう。

「弟がいる長女は文系を選びやすく収入が低い」きょうだいの組み合わせが人生に及ぼす意外な影響 PRESIDENT Online

弟がいる長女は文系を選びやすく、収入が低い傾向にあるとのこと。

パパと弟が外遊びすることが多くなると、
長女と母、弟と父、という男女別チームで行動することが多くなり、
結果「男性=仕事、女性=家事・育児」に準じた行動をとりやすくなる傾向が他国の調査で出ている。
それが将来の収入などに影響していて、
特に日本は他国より性別役割分業意識があるので
より強く出ているかもしれない(まだ分析されていないけど)
・・・という内容でした。

一般的に、一姫二太郎(第一子が女の子、第二子が男の子)は、
育てやすくて喜ばれていただけに、
なんとも受け入れがたい内容です。

そして、
性別で役割を分業する意識があるのは、
日本のみならず、なのですね。

男女の役割を分けたまま、女性が外で働くのは無理がある

昭和平成を経て令和も4年目。
業務の性質上、男性のみで構成されていた職場に
女性が入ることも珍しいことではなくなりました。
同じようにタスクを背負い、
立場も与えられるかもしれないけど、
育児期のキャリア形成に苦戦している状況はなかなか改善されません。

私の周りにも、
帰宅が毎日深夜、相談なく出張やゴルフを入れちゃう夫と、
家事育児を一手に背負いフルタイム勤務で日々カツカツな妻、
という組み合わせが多く存在しています。
男だから仕事最優先、
女だから家事育児を一手に背負う、という
性別での役割分けが残ったまま。

双方が納得していればそれでいいけれど、
大概のケースは
「やりたい仕事があっても手を挙げられない」
「夫が”育児家事お手伝い”の域を超えようとしない」と
女性側がモヤモヤしている。

女性だって仕事しているにも関わらず、
なぜ育児家事は女性のみが背負わなければならないのでしょう。
産休は致し方ないとして、
時短勤務や育休は男性でもできることなのに。

これこそ「女だから」「男だから」という意識が影響していそう。
家事育児を男性とシェアできない理由をぐるぐると考えてみました。

●育児家事をしない父を見て育った

平日は残業に宴会、
週末はゴルフでほぼ不在の父。
母は家族が健康に暮らせるよう忙しく動きまわる専業主婦。
定年後の父は、肩書きもtodoも無くなり、
新たなコミュニティに入ることもなく家にばかりいて、
母は子育てが一段落ついたというのに
今度は夫の朝昼晩のお世話がスタート。
さ、人生100年時代、
この2人の長い道のりはどう進んでいくでしょうか。
男は仕事、女は育児家事昭和スタイルの夫婦の行末に注目です。

このような父母の元で育って来た男性と女性。
女性がいくら「自分は母のようにならない。経済的に自立したい」と思っても、
肝心のパートナーが「母親は家族のために尽くすのが当然」
と思っているかもしれない。

育った環境で染み付いた価値観は、
簡単に変わらないし変えられない、
というのが現実なのかもしれません。

もちろん、それでいいはずがない。

●女性に育児家事を背負わせる周囲の言葉と肩身の狭さ

子どもが生まれると、
実親含む数多の先輩からおせっかいな言葉が降り注ぐことがあります。

「母乳で育てた方が身体が丈夫になる」
「早く2人目を作ったら?兄弟姉妹がいないと将来寂しいよ」
「やっぱりお母さんは子どものそばに居てあげなくちゃ」
「0歳から保育園なんて可哀想に。そこまでして働きたいの?」
「三つ子の魂百までって言うでしょ」

完全母乳で育てようとすると子どもから簡単に離れられない。
育児ワンオペで職場復帰するだけでもやっとなのに、2人目だなんて。
保育園はかわいそうなの?
3歳まで働くなってこと?私のキャリアは?

子育てに正解なんてないというのに、
自分たちの生きてきた道が正しいと言わんばかりの無邪気な発言。
初めての育児で不安の渦中にあるときに
あれやこれやと言われると、
自分が外に出て働くこと自体が”わがまま”なのではと思えてきます。

復帰してみたら、今度は職場の先輩たちが
「お迎えはウチがいつも最後の一人だった」
「シッターさんフル活用で残業・出張してた」
と武勇伝を語る。
自分もそうしなければいけないの?
あなたもそこまでやってねってコト?
職場での肩身が狭いから被害妄想も膨みます。

仕事が全然終わってなくても、決まった時間には終業。
保育園から発熱連絡があれば、どんな重要な会議中でも帰路につく。
今週は「申し訳ありません」を何度言っただろう。
溜まった洗濯や掃除、
週明けの献立の買い出しと作り置き、
隙間で子供の相手をしているうちに週末は終わる。
シッターの手を借りない範囲で頑張りたかったけど、
家事は常に自転車操業、
仕事だっていつも中途半端。
こんな窮屈な思いをして働く意味はどこにあるのか?
諦めて育児に専念すべきなんだろうか?
女だから、仕方ないのか?
先輩たちから掛けられた言葉を反芻しながら、
月曜朝の満員電車で”一人”悶々とするんです。

この”一人”で悩んでいるのがそもそも変だよね。
子どもの親はもう1人いるはずなのに。

男性も同様に仕事をセーブして育児家事を協働していたら、
この日々の苦悩を分かち合い、
忙しい時は助け合いながら乗り越えられるはずなんです。

●夫の育児・家事に文句を言ってしまう妻

一人暮らしをすると、
親がどれだけ自分の身の回りの世話をしてくれていたか、
その有難みがわかる。
自然と、最低限の炊事・洗濯・掃除ができるようになる。
一方で、ずっと親元で暮らしている人は、
それらのスキルを磨く機会がほぼない。
これは男女問わず言えることですが、
特に男性の方が家事スキル向上への意識は薄いでしょう。

そんな夫が慣れない料理にチャレンジしたとき、
材料の無駄買いが多いとか、
終わった後のキッチンが汚いとか、
ちょっと塩気が強いだとか、
うっかり文句をつけちゃう妻。
夫はその瞬間にやる気を削がれて終了。
次に重い腰をあげるのはいつになるやら。

いやいやいやそれくらいやって当たり前でしょー!?
という気持ちは一旦心にしまって
「ありがとう!すんごい助かる!」と感謝と喜びを伝えてみる?
よほど許せないことでない限り、指摘するのはやめとく?
プライドの高い男性ほど、褒めちぎる作戦はどう?

自分だって、
最初から何もかもうまくできてたわけじゃないんだしね。
しかも自分のやり方が正解とは限らない。

本来は女の仕事である家事育児

・・・なんて意識が自分にもあるなら
そこを変えていかないと、
ずっと自分が背負い続けることになっちゃいますね。

●妻を「おまえ」と呼ぶ夫の序列意識

昭和歌謡曲は「おまえ」って歌詞が良く出でてくる。
女だから
男だから
の世界に陶酔する曲が名曲ラインナップに並んでます。

おまえと呼ばれることを受け入れた時点で、
上下関係が決まっているのかもしれない。
育児・家事を一緒にやって欲しいと伝えたところで、
それはおまえの仕事だろと一蹴されるのかもしれない。

そんなことを考えていたら、また興味深い記事に出会いました。

女性が高等教育を受けにくいのは、前問で答えたように、まず、教育をつけても元がとれない(教育投資のリターンがない)と親も周囲も考えているからです。どうせ家庭に入るなら、せっかくの教育がムダになる、それなら席を空けて、男子に譲ってやったらよい、と。
  (中略)
もうひとつ、女子の高等教育をきらう理由があります。「高等教育を受けると女は生意気になってろくなことにならん」と思われているからです。
  (中略)
男が主、女が従の男尊女卑の社会では、女は男より何につけても劣っているほうがよい、なぜって? その方が男が女を扱いやすい、からです。

上野千鶴子さん、祖母が「東大に行ったらお嫁に行けない」と言いますが本当ですか? そんな”クソバイス”真に受けないで 社会学者で東京大学名誉教授の上野千鶴子さんは「女の子だって人生の主役なのに、女の子がどうやって人生の主役として生きるかを書 president.jp

食物連鎖の頂天にいるライオンの如く、
身体が大きくて筋力の強い男の方が上、みたいな感じでしょうか。
こういう思想の男性が一定数いるってことですよね。
そんなパートナーだと、
女性の負担が増えるのは明白です。

幾多の困難を乗り越えていく「家庭」というチームにおいては、
夫婦・男女は対等でありたいです。
お互いの個性を尊重しあい、
才能と努力をリスペクトしあえる人をパートナーにする。
付き合ってる人から「おまえ」って呼ばれたら、
その時点でリスクがあると思ってた方が良いかもですねー。

●男性が育児に参加し辛い職場環境

私の以前の職場にも男性の育休制度はありました。
1ヶ月間とか取得しようものなら、
その後ずっと色メガネで見られるんじゃないかなぁってくらい、
取ったとしてもすごく短かかった。

内閣府の調査でも
長期育休を取らない理由の7割が
「職場に迷惑をかける」
「職場が育休を認めない雰囲気」という
職場由来のものでした。

1カ月以上の育休を取らない理由(複数回答)を聞くと、「職場に迷惑をかけたくない」が37.2%で最も多かった。「職場が男性の育休取得を認めない雰囲気である」(32.9%)が続き、男性の育休への職場の理解が引き続き壁になっている現状が浮かぶ。

男性育休「取得せず」4割、職場理解が壁に 内閣府調査 内閣府は4日、新型コロナウイルス禍での生活意識と行動変化に関する調査を公表した。子育て世代の男性で育児休暇を取得しない人が www.nikkei.com

「24時間戦えますか?」
というCMの時代を生き抜いた上司で構成される組織は、
長時間労働を是正する意識がそもそも薄いことがあります。
未だに法令遵守ギリギリラインで攻めていると、
誰かが休めばそのぶん誰かが死ぬほど働くことになっちゃう。
業務量が多すぎて休めない職場はほんとツライ。

また、24時間戦士の休暇理由は「冠婚葬祭」くらいだったので、
「育児」のために長期間休む部下を良く思わない(その場では了承してもその後の処遇が悪い)
という不利益も想定されます。
そして同僚からの目も厳しいようで、

同僚の男性が育休を取ることへ思いを聞いたところ、全体の3割超が「抵抗感」を訴えており女性よりも男性が多い。年代別では40代(35.0%)、30代(32.8%)となっており、育休取得で生じる業務のしわ寄せなどへの懸念が根強い現状がある。

男性育休「取得せず」4割、職場理解が壁に 内閣府調査 内閣府は4日、新型コロナウイルス禍での生活意識と行動変化に関する調査を公表した。子育て世代の男性で育児休暇を取得しない人が www.nikkei.com

結婚年齢もあがり、
子供を持たない選択も増えているので、
育児苦労を共感できる人が多くないのかもしれません。
周りを気にするタイプの人は尚更、
育休・時短取りたいだなんて言い出しづらいですね。

●厳しい目を向けられても乗り越えるしかない

いろいろ困難な世の中で心苦しいですが、
でもやはり夫が、男性側が、
もっと意識を変えていかないといけない事だと思います。

女性だって、産休育休にあたって厳しい目を向けられているんですよ。
妊娠がわかったときから、の長丁場です。
体調不良などで職場に負担をかけ、
否が応でも負い目を感じる生活が始まり、
嫌味も言われながら、
やりとげたかった仕事も無配慮に外されながら、
家族のために自分の気持ちに折り合いをつけ、
新しい命を守るという重大任務を遂行しながら職場に向かいます。

このときの職場の雰囲気に耐えきれず、
未来を見据えて不安になり
辞めてしまう女性が多いことも知ってますよね。
そのくらいの覚悟を強いられているのです。

じゃあ、夫は何をする?何ができる?何をすべき?
仕事の代えはいても、夫・父親の代えはいません。
職場とは退職するまでの関係だけど、
家族は一生のつながりです。

何も変わらない、何もしないのは、
ただの怠け者だと思いませんか。

●育児で鍛えられる能力

限られた時間内で仕事と育児家事を両立させるには、
常に段取りを考え、
瞬時に優先順位を判断し、
最短で処理していく必要があります。

このマルチタスク能力は、
子育てにより否が応でも鍛えられ、
これがその後の仕事にも必ず活きてくる。

私の肌感覚で言い切りますが、
会社の仕事で得られる知見を1としたら、
育児経験で得られる知見は100〜1000。
人生観がガラリと変わります。
一生を共にする家族の絆は深く強いものになります。
勇気を持って仕事をセーブし、育児に参画して欲しいです。

●上司が帰らなければ部下も帰れない

それにしても、未だ長時間労働の職場はどうにかならないか。
「いつでも誰でも休める」職場はどうやっても作れないものなのか。

子どもを持たない人だって、
親の介護や、
愛犬愛猫の通院や、
好きなアーティストの年1イベントや、
その他も大切な休暇理由があります。

どんな理由であれ
「休むのはお互いさま」と思えるチームの雰囲気を作るために、
まずは上司が率先して休むことが必要ですよね。

子ども達の未来のために、自分が手本になる

女だから・男だからを一旦取っ払って、
自分の頭で考えてみる。
我が子の未来を想像してみる。

我が娘が、
努力を重ねてやっと得た職を、
出産に際して夫の協力が得られないという理由で
手放さなければならない状況になったら。
もしくは、子どもを諦めることになったら。

我が息子が、
一家の大黒柱を一人で担い続けて、
無理をして身体や心を壊すようなことになったら。
育児期に家族の絆を作れず、
家に居場所がなくて街をひとりフラつくことになったら。

想像すると胸が痛い。
どれも絶対あって欲しく無い。
家族の中での役割は性別で決めるのではなく、
パートナーとの話し合いでちょうど良いバランスを取れば良い。
女性が1人で全てを抱え込んでしまう構図は、
男性がそれを理解して行動しなければ改善されません。

女性の側も、
女だからと我慢せずに、
自分ができること、パートナーにやって欲しいこと、
ロジカルに説得して相談していこう。
我が子の手本になるよう、
自分たちの姿を見せていく。
それが「女だから・男だからに縛られない未来」を作るんだと思います。

あとは、後輩に余計なことは言わないと心に誓う、だね。
子育て期の対等な立場で発言しているつもりでも、
何年も先を歩んでいる人の言葉には相当な重みが乗っかっている。
何気なく発した経験談が後輩達を苦しめることもある、と自覚する。
自分は老害にならないと誓う。
ほんと、気をつけなくちゃ。

ABOUT ME
子と親の100年研究所
子と親の100年研究所
代表
子どもと親を取り巻くさまざまな課題について、自分なりの答えをまとめています。
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